「税務調査」の話は、このコーナーのテーマとしては少々硬いかなぁと思いつつ、元税務署員としては触れておきたいことなので、ペンを執った次第です。
一昨年10月1日に、エヌエムシイ税理士法人に入社して、現在まで17回(20法人・個人のクライアント)、いわき署・日立署・上野署の国税調査官からの税務調査を受けております。
私も調査を受けるたびに、大変だなぁと実感しつつ、同時に皆様方のご苦労を痛感いたしております。
通常、いわき事務所では、税務調査を受けるという段になると、お客様と事前レクチャーを調査予告から早めの日程で実施するようにしています。これもお客様が税務調査からの不安感を少しでも和らぐよう、そして、私ども会計事務所の立会いスタッフである私と監査担当者を信頼して頂くことを主目的に行います。
税務調査のプロ(国税調査官)を相手にして通常であれば3日ないし1週間という、長いようで短い期間をお客様と一緒に対応するということは大変疲れるものです。これは相手の調査官も同じことで、真剣勝負でくる訳ですから相当疲れる作業のはずです。
税金という形で国の歳入を担当している役所の国税庁では、税務調査で「歳入の一部を確保しなければならない。」ということはあまり考えておりません。「税務署という役所」で話したように進駐軍からの税収の目標額というものは現在ありません。民主国家である以上、行政側も納税者が法律(税法)で定められたことを基に正しい申告(自主申告)をしてもらえばいいと考えています。また、それを期待している訳です。
しかし、世の中、そんな決まりごとのようには、事は運ばない。そこで、自主申告の担保として税務調査があります。
税務当局は、納税者から適正な申告を得るために、厳しい税務調査を実施することになります。 しかも、「質問検査権」という強力な国家権力の行使によります。さらに、調査を受ける納税者には、「受忍義務」というものが課されており、税務調査を拒むことはできません。
そのような強権力の「質問検査権」も調査官の使い方によっては、納税者の協力が得られない状態になる場合があります。そして、協力が得られなければ、行政効率は悪くなるし、何よりも「税務当局は、国民からの信頼・支持が得られなくなってしまう。そうすると、その先には、適正な申告を期待できなくなってしまう」という結果が待ち受けています。
私は、税務署時代、若い職員に対し、税務調査を行う心構えとして、
(1)質問・検査をする時には、自分自身(調査官)、この質問・検査を受ける納税者の立場になって、質問・検査をすること。なぜなら、調査を受ける立場の人は、弱いもので、それに追い討ちをかけるような傲慢な態度・生意気な言葉で、質問・検査をすると納税者の方は不快感を覚え、調査に積極的に協力しなくなる。
(2)税務調査というものは、行使するに当たっては性悪説で、最後の判断では性善説で判断し、処理すべきである。
(3)税務職員も、調査を受ける側の納税者も人間であり、税務調査を通じて人格と人格との真剣勝負のぶつかり合いと言うことになる。そう考えると国税調査官として自分を磨くということの大切さを知るべきである。
(4)税務職員は、国民の皆さんから畏敬されなければならない。それが信頼へと繋がる。」と指導してきました。
現在、自分の置かれている税理士という仕事は、クライアント側に軸足がありながら、一方で行司役をしなければならない仕事の難しさ・困難さを実感しながら税務調査の予告がないことを祈っている日々です。 |