ヒューマンワークの重要性

元国税調査官が語る税務調査対策 税務総合戦略室セミナー

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「ヒューマンワークの重要性」(前編)

人の労働の価値基軸は、社会の進歩や変化とともに変わってきている。労働の質的側面に着目すると、主に手足を使う肉体労働がメインであった「フットワーク・ハンドワークの時代」から、頭脳労働・知的活動がメインである「ヘッドワークの時代」へと変化してきている。さらに、主に心を用いることが重要な要素である「ハートワークの時代」へと変遷をたどってきたことが分かる。

今は、社会のソフト化に伴い、頭脳労働による成果が大きな価値を生み出している時代からさらに一歩進み、「ハートワークの時代」へと移行しようとしていると言ってよいだろう。そこでは、「真・善・美」が求められ、「良心・善意・連帯心」を旨とする「心」を大切にすることに大きな価値が置かれている。

「良心」とは、自分の心に恥じない姿勢で生きること(コンプライアンス・内部統制等の視点)であり、「善意」とは、他人の心を慮って行動すること(顧客満足度の視点)であり、「連帯心」とは、豊かな想像力と良好なコミュニケーションによって互いに相手の立場を十分に理解し、信頼関係に基づく人間的つながりを基盤として何かを成し遂げようとする関係性を意味している。そして近い将来には、「ハートワーク」よりもなお一層人間性如何が問われ、さらに上位に位置付けられる「ヒューマンワーク」という概念を意識しなければならない時代が到来するだろう。

私の造語である「ヒューマンワーク」とはマニュアル経営と対峙する概念であり、人間性の原点に立ち返り、心身を限界まで尽くして、人として有する全機能をフルに働かせる労働を意味する。

人は、自分の限界まで働くことで初めて自分の能力を知り、また自己の長所・短所と真正面から向き合うこともなり、人間としての本当の成長にもつながる。その意味で、労働とは、手足・頭脳・心というような機能に分けて考えるだけでなく、これらを統合した人間性全体の発露として捉えるべきものであると言ってよい。

別の表現をすれば、「ヒューマンワーク」とは、〝人間らしさ〟を基調とし、真剣味をもって「熱血・入魂・本気」を具体化する自己表現であり、全人格・全人間性をかけて全身全霊で「血と汗と涙の結晶」を育くむべく、無我夢中・一心不乱に人間の理想である「夢・愛・誠」を求め続ける働きである。これこそが、民族や国籍を超越した、人類に普遍的な「ワーク」であると言えるだろう。

どんなに些細なことでも相手のことを考え、肉声が伝わるように一生懸命に尽くし、努力の「結晶」を見せることができれば、猜疑心や反発で頑なになった相手の心でさえも和らぐ。また、クライアントに対しては、幸せを実感させることが大切になる。そして、これが実は「ヒューマンワーク」の行き着くところであり、労働においてはクライアントが求めていることを提供し、単なる満足ではなく、大いに満足させることが重要になるのである。

 「できるなら、どうか心をつくし、能力をつくし、また、これまで蓄え
た力を全て発揮して、出し惜しむことのないようにしてください」という吉田松陰の言葉も、全力で仕事をすることを旨とする「ヒューマンワーク」の本質を端的に表すものとして理解することができるであろう。

私が今、「ヒューマンワーク」概念を敢えて提唱して必要性を訴えるのは、企業のグローバル化現象が急激に進み、企業間競争が激化していることがひとつの理由である。グローバル化の進展の中で、各企業は多様な人材を抱え、多様な価値観、多様な民族性や国民性を統率したうえで、より大きな成果を生み出さなければならなくなっている。

例えば、「集団主義」の日本人と「個人主義」の外国人のように、根本的に相容れない者同士でも、グローバル化のなかでは同じ組織で共に働き、互助と牽制の適切なバランスのもとで成長し成果をあげなければならず、その円滑なマネジメントのために、各企業は「ワーク」についてのグローバルな共通認識を構築する必要に迫られているのである(後編へ続く)。

(労働新聞社「労働新聞」10年1月25日号、2月22日号掲載分の要約・修正)

 

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執筆者紹介

税理士


NMC顧問弁護士 高井 伸夫
高井・岡芹法室事務所会長

1961年東京大学法学部卒業
1963年弁護士登録
1973年髙井伸夫法律事務所設立
上海事務所(99年)、
北京事務所(06年)も開設。
一貫して人事・労務問題を
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