近年、日本企業の海外進出や外国法人の日本進出など経済の国際化が進展しており、また個人でも国境を越えた投資活動が活発化しています。こうした流れの中、最近の国税当局の発表資料等より、特に海外取引に対する課税強化の動きが高まっていることが感じられましたので、その内容についてお伝えしたいと思います。
世界各国間の情報交換について
2009年4月 ロンドン・サミット(第2回金融・世界経済に関する首脳会合)において、世界各国が税に関する透明性を高めること及び情報交換を積極的に行うことについて合意しました。これを受けて、これまで銀行機密に係る情報交換ができなかった国や、情報交換を実施するための協定が無かった国・地域の間で情報交換を行うネットワークが急速に拡大しています。2010年4月現在、日本が締結している租税条約は47条約(対象国は58カ国)で、租税条約に基づく情報交換事績は2009年の26万件から2010年には50万件と飛躍的に増加しています。
国税庁の人事から読み取る国際課税強化の流れ
2010年7月の人事異動で国税庁に「国際課税分析官」というポストが新設されました。このポストは課長クラスの要職で、租税条約に基づき各国の税務当局と情報交換し、海外税務当局との協力関係を強くしていくことで国際租税回避スキーム(各国の税制や租税条約の違いを利用して税逃れをする行為)を解明することを目的にしているようです。
また当局は国際課税関係部門の増員を続けており、その数はこの10年で倍以上に増えました。平成22事務年度においても前述した国際課税分析官の他、国際税務専門官、査察国際専門官を増員し強化を図っています。
過去においては、民間企業の国際化に比べて国税職員の外国語、海外取引の専門知識等が不足しているという現実がありました。そのため国税庁では、職員の研修機関である税務大学校において、選抜試験により選定された職員に対し、国際課税に関する法規や租税条約、金融取引、語学などの研修(国際租税セミナー)を実施し、職員の国際課税に係る調査能力の向上を図っています。
国外送金等調書などの資料情報の活用
国外送金等調書とは、国外への送金及び国外からの送金を受領した金額が100万円を超えるものについて、金融機関から税務署に提出される法定の報告書です。
以前は提出基準が200万円超だったのですが、平成21年4月1日以後にされる国外送金等から100万円超に引き下げられました。送金額を分割して調書が税務署に提出されないようにするケースが多く見られるようになったため、法律を改正し金額を引き下げたといわれています。
富裕層に対する国税当局の対応
先日公表された2011年税制改正大綱では、①年収1500万円を超える者に対する給与所得控除の縮小②相続税の非課税枠を縮小等、高所得者層への税負担が重くなる方向性が明確に示されています。マスコミでは「金持ち増税」とも言われているように、「取れるところから取りたい」という政府税制調査会の意図が見えてきます。
さらに国税当局では「富裕層」の資産運用が多様化・国際化していると考えていますので、国外送金等調書や租税条約に基づく情報交換制度を活用して資料情報を収集し、積極的に税務調査に取り組む方針だと思われます。
|